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顧客サポートについて考えてみた [いわゆる日記]

酷寒の日が続く二月。たまにはお仕事関係のことを書きます。

今携わってるお仕事は購入者向けサポートとそれに関連するソリューションの領域。二月後半は前者のうち訪問サポートの方々の研修。

おまかせ研修

お客様宅へ伺って設置設定をするお仕事です。この業界はかつては電器屋さんのお仕事、IT製品になってからは専門の業者さんのお仕事になっています。インターネットの普及で回線工事が爆発的に増えその波に乗って成長してきた業界です。光回線の普及も飽和し、かつてはそこそこの単価で訪問のお仕事があったようですが最近では単価はビックリするくらい安くなってしまったそうです。それでも我々が依頼してる会社さんは良心的な作業をしてくれてます。我々もサービス内容の表現をわかりやすくする事で受注を増やしてきました。そんな昨今、訪問後のお客様アンケートや電話の中からうまくいってない事例が見られるようになりました。作業が完了してないわけではないのですが「愛想が悪かった」「さっさと終えて帰ってしまった」「聞いたことにちゃんと答えてくれなかった」などなど。訪問件数全体に対して数パーセントの比率ですがどうにも気になるケースです。お客様のニーズと我々のサービスにズレが出てるのではと感じました。

古い記憶

そんな時古い記憶が私の頭に浮かんできました。私は家業の手伝いで小さな頃から販売や当時は「取り付け」と呼んでいた設置の現場に行かされました。従業員さんの車に同乗しお客様宅へ。車中で年の頃で言うと二十歳やそこら上のお兄さんの色んな話が聞けたり楽しかった思い出です。設置作業を終えて帰ってきた後お客様から不満の電話が入ることがたまにありました。電話口でのやり取りを聞いていると作業に抜かりがあったわけではなくお客様が上手く「使えてない」ことへの不満の電話だったようです。「そうか、お客さんは機械を買ったというよりはそれによって出来ることを買ったんだな」「だから使えるようにわかるまで説明してこなくちゃいけないな」みたいな事を子供心に感じました。その頃多かった事例はビデオの取り付け。TV側にビデオ入力なんてものがない時代、ビデオの映像はRF変換されアンテナ線でTVにつながれていました。ビデオを見たい時はTV側で空いてるチャンネル、東日本では2チャンネルを選んでから、ビデオ側でRF切替スイッチを押し再生ボタンを押すという手順が必要でした。この手順を覚えてもらわないと再生出来ないのです。ボタンに1、2、3と書いたシールを貼ったり手順を書いた紙を置いてきたりいろいろ工夫してましたね。

余談になりますがこの時の2チャンネルと言うのが今の巨大ネット掲示板の名の由来とも言われてます。既成の放送ではなくビデオやその後に出たゲーム機などを自由に見られるという事からの命名と。

なぜ操作が難しくなったのか

余談はさておき、今、設置設定で訪問している機器がその当時のビデオに比べてどうかと云うとこれは確実に複雑な操作が要求されるものになっています。昔の機器は目で見えるものがすべて、本体のボタンを押すというような行為で操作できました。それがリモコンの登場あたりから変わります。最初期のリモコンはボタン数も10個程度。(下の写真はS社のビデオ。ワイヤレスリモコン付きがうけて大ヒットしたモデルです)

SLF3

それから時間の経過とともにボタンの数が急増。本体にはボタンがないけどリモコンにある、言い方を変えればリモコンにしかその操作ボタンがない、ということになったあたりから混乱が始まったと思います。ただ、基本操作しかしないのであればわりとシンプルに使えましたからなんとかなっていました。まあ、今でも白物家電といわれる機器、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、エアコン等はそうですよね。(電子レンジのメニューは結構複雑で私は苦手です)

RDZ

パソコンの登場

ところがここにパソコンという異星人が登場します。Windows95発売が社会現象になり各家庭にインターネットが普及、このあたりから各個人にID、パスワードが設定されるようになっていきます。そもそもパソコンはUIの塊。これらは画面のあちこちをさわりながら操作を習得していく、いわば試行錯誤しながらやり方を身につけるものです。私自身の事を振り返ってみても、大学生だった80年代前半からPCを趣味とし、会社に入ってからは90年代半ばから個人に一人一台のPCが配備され体系的な研修はもとより事務仕事であればPCが使えないとやっていけない環境になっていきましたから膨大な時間をPC操作に費やしてきたことになります。だからまずまず使えてるだけです。これがちょっと上の世代の当時偉かった方になると、PC導入の波に飲まれることなく、メールは見るけど秘書の方がプリントしたり、指一本で「了解」とお返事するだけで済ませてた方も多かったようです。ましてや寿退社で家庭に入った女性などはこうしたIT機器とは無縁の生活だったんではないでしょうか。ところがそこへPCが普及していく、PCは使わなくてもその後登場した携帯電話が瞬く間にiモード化、スマホ化してIT機器になっていき否応なしにこれらとつきあわねばならなくなったのです。私もその領域に入るつつあるので実感しましたが、老眼で手元が見えずらくなったり、ちょっとした記憶が苦手になっていく中で○○のIDだ、パスワードだというのは厄介ですし、操作もいろいろな方法がありすぎるのがむしろ大変です。

Windows8はなにをもたらしたか。

冒頭に書いた最近私の仕事で増えてきたお客様のニーズと我々のサービスのズレ。これはWindows8という新しいOSの登場が拍車をかけたようです。このOS実はよくできているな、と最近は思うようになったのですがリリース直後は「なんじゃこれ使いづらい」が率直な印象でした。いわくスタートボタンがない、コンパネ出すのがよくわからない、シャットダウンはどこから。多くの方も同じような印象を持たれたのではないでしょうか。メトロとかモダーンUIといわれるタイルの並んだスタート画面。これはあまりPCを使いこなしてこなかった方にはとっても適したUIなのです。PCに詳しい方から見ると単機能のシンプルなアプリしかない「ストア」もこれまでPCのソフトの複雑怪奇なインストール作業に抵抗があった方々にはとてもとっつきやすいものだそうです。アプリひとつにひとつの機能。やりたいアプリのタイルをタッチすればいい。操作も直感的に画面をタッチ。わからなくなったらWindowsボタンでスタート画面に。これがわかるとお客さんは「自分にもできた」ととてもいいお顔をされます。そうWin8はこれまでPCを「あきらめていた」方にも使えるOSなのです。

win8

サポートはなにをサポートしているのか

それなのになぜズレ、すれ違いが生じるのか。それは設定し説明する側とお客様との間でのコミュニケーションがきちんと成立してないから。説明する側は「わかりきったこと」なので口頭で空中でスラスラと説明します。お客様は始めて聞くような用語の連続。さらに説明側は自分の作業によるトラブルがないような免責フレーズをちりばめます。

「お客様、このWindows8ではアカウントの設定にマイクロソフトアカウントとローカルアカウントと二つがありますが・・・」「ローカルアカウントで設定しましたのでこれまでのプロバイダーのメールを使う場合はデスクトップに切り替えていただいてこちらの・・・」

お客さんの頭はもうオーバーフローです。結局、Win8スタート画面の左の上にあるメールのタイルを押しても望む結果は出ず。コールセンターの電話待ち行列に並ぶ羽目になります。これをするにはこれ。あれをするにはこれ、という設定をして紙に書いておく、それこそ昔のビデオのようにシールでも貼っておくといいかもしれません。

知ってほしいわかってほしいことを相手に伝える、伝わったのかわかってもらえたのか、そしてその結果、相手はそれができるようになったのか。忘れないか、忘れても大丈夫な手段を講じたか。自分は説明しましたよ、ではなく。聞かれたから答えましたよ、でもなく、相手がそのことをできるよう助けることが本来のサポートなんだなとあらためて考えさせられる昨今です。


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